ずんの日記

毒にも薬にもなりませぬ

【読書感想】掃除婦のための手引書/ルシア・ベルリン/講談社文庫

ルシア・ベルリンの掃除婦のための手引書は、上半期一番おもしろかった本になったかもしれない。

印象に残った一節に付箋を貼っていったら

すごい量になった。

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彼女の物語は、とにかく登場人物が秀逸なのだと思う。

子供のころの学校の先生やシスター

断酒会とかアル中女性(多分本人)

毒母、妹、息子などの家族との関係

刑務所の受刑者たち

 

半分フィクション、半分本当のような話らしいが、

そのせいか情景が生き生きと描かれている。

アメリカという国は知っているけど

馴染みのない国の知らない文化圏なのに、なぜかありありと想像ができる。

驚くような話や痛々しい話もいくつかあったり。

多分またいちから読み直すだろうと思う。

彼女の言葉をもっと浴びて、自分に吸収してしまいたい欲。

どこか自分にも似ているところを見出している。

貧しいけど貧しくなく

庶民的だけどハイソなところもあり

教養があるけど、アル中だ。少し社会不適合者的な感じも。

職業を転々とするのも、なんか共感してしまう。

死後に再評価されているというのも、なにか彼女らしい。

むき出しの人間、むき出しの文章

すごいものを読ませてもらったという感じ。

 

掃除婦のための手引書より

掃除婦が物を盗むのは本当だ。ただし雇い主が神経を尖らせているものは盗らない。余り物のおこぼれをもらう。小さな灰皿に入れてある小銭なんかに、わたしたちは手を出さない。

わたしたちが本当に盗むのは睡眠薬だけだ。いつか入り用になったときの保険に。

掃除婦たちへアドバイス:奥様がくれるものは、何でももらってありがとうございますと言うこと。バスに置いてくるか、道端に捨てるかすればいい。

掃除婦たちへ:原則、友達の家では働かないこと。遅かれ早かれ、知りすぎたせいで憎まれる。でなければいろいろ知りすぎて、こっちが向こうを嫌にいなる。

精神科の医者も避けること。こっちの気が変になる。わたしがあの人たちを分析してあげたいくらい。そのシークレット・シューズの意味は?

 

いずみん@岸本佐知子先生訳本やエッセイも読み始めた

 

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