ずんの日記

毒にも薬にもなりませぬ

【読書感想】女のいない男たち/村上春樹/文春文庫

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やっと読みました。やっとありつけた。

昨年、夫がこの本を買って読んでいるのは知っていたので

わたしも終わったら読もうと思っていたのだが

2021年12月に軽井沢の山小屋を戸締りして、東京に出稼ぎに。

その時に、軽井沢にこの本を置いてきてしまったのだ。

次にこちらにくるのは2022年の5月ごろの予定。

映画の「ドライブマイカー」が随分話題となっていて

本当は映画館に行きたかったくらいだが、原作を読むまでは・・

と保留にしていたら、あれよあれよと時間が経ってしまった。

そしてやっと「女のいない男たち」を読んで

映画「ドライブマイカー」を鑑賞した。

私の理解が正しければ、それらはまったく違うものだった。

これは読書感想なので、本の感想を書きたい。

私の理解が正しければ、男たちが中2のように女性を愛して

忘れられず、心を病んでいくというお話集だ。

(ざつなまとめでごめんなさい)

 

その短編のひとつで一番最初のお話が「ドライブマイカー」

うだつのあがらない俳優が妻の不貞行為をどう解釈すればよいか

理解をしたいけど、理解できない

仕返ししたいけど、でもそんなの意味がない

そんな葛藤を村上春樹らしく、技巧的かつ写実的に書いたもの

と読んだ。

わたしが好きなのは、やたらと運転がうまいみさき、24歳、北海道出身

ヘンリーボーンのジャケット、コンバースのスニーカー。

「天現寺の交差点を右折して、明治屋の地下の駐車場に車を停め、

そこで少しばかり買い物をして、そこから有栖川公園の方に坂を上がって

フランス大使館の前を通って明治通りに入る。」

「わかりました」

彼女は地図が頭に入っている。

「シフトチェンジが繰り返されていることはほとんど感知できない。

エンジン音の変化に耳を澄ませてようやくギア比の違いがわかるくらいだ。」

(わたしには、これらの意味は分からないがとにかく運転が死ぬほどうまい

というのが伝わってくる。)

これが写実的に好きなところ。(映像化されてなかったのが残念)

 

妻の浮気相手である若い俳優は、別にたいした男ではなかった。

それによって益々なぜ彼でなければならなかったのかつかめなくなる。

 

家福は妻が浮気をしていると知りながら、知らないふりをして

普通に彼女との平穏な日々を過ごし、セックスもする。

また、その若い俳優に仕返すつもりで友達のふりをして近づくが

友達のまま、特に何もしない。

「そして僕らはみんな演技をする」

わたしはこれがこの話のメインテーマだと思っている。

 

「イエスタディ」

大学生くらいの年頃の付き合うとか、セックスとか、将来とか

そういうことを描いていた。

 

「独立器官」

わたしにとってこれが一番脳内映像化に成功した一作であった。

 

そして「シェエラザード

平たく言うと、なんだかちょっとおっかない女の話で

それを描くのに、実に周到な設定や登場人物、そして彼女の話す話。

 

全部読み終えて、夫に感想を話したときは

「なんだよ、中2病の話じゃないか」などと

男性のロマンチストを嘲笑気味に笑ったことも否まない。

ただ、みな、それぞれ女性を失っていく。

それをまじめに丁寧に、正直に、ハルキワールド全開に書いた

やっぱり秀逸な作品集だと思った。

男性にとって女性を失うとは、ということを。

あとからじわりじわりとくるのであった。

 

いずみん@わたしは映画より小説のほうが好きです

 

 

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