ずんの日記

毒にも薬にもなりませぬ

【読書感想】雪国/川端康成/新潮文庫

2022年4月23日

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五反田のよく分からないイタリアンレストランに入った日。

まだ寒い4月。夕方雨が降り始めた。

歩道橋から高架下の写真を撮ったらソールライターみたいな写真がとれて

機嫌は良い。

一人で入ったよく分からないイタリアンレストラン。人は誰もいない。

料理を待つ間、フランスのソーヴィニヨンブランを飲みながら

川端康成の雪国を読んでいた。

エスカルゴバターのマッシュルーム炒め」も

「魚介のペスカトーレ」もややぬるく、火通しが十分ではない。

ただただ生臭く、マッシュルームも生っぽい食べ物だった。

全体にオイルも足りないとみえて

口の中で生臭さと、もさもさ感が同時に押し寄せてくる。

ここのコックは食べることに興味がないとみた。

でも、貧乏性のわたしはなんとか半分くらいは食べて

本読みを再開したり、フォークでパスタやムール貝をいじったりしながら

あいまいな食後の時間を過ごす。

ただ唯一の救いは、ワインはそれなりに美味しいということだ。

それはそうだ。これはボトルからグラスにつがれただけのものだから

まずくなりようがない。

ワインは偉大だ、救いだとつくづく思った。

 

「感想を書いとくんだね?」

「感想なんか書きませんわ。題と作者とそれから出てくる人物の名前と

その人たちの関係と、それくらいのものですわ。」

「そんなものを書き止めといたって、しようがないじゃないか。」

「しようがありませんわ。」

「徒労だね。」

「そうですわ。」

中略

「おい、寒いじゃないか。馬鹿。」

中略

駒子が息子のいいなずけだとして、

葉子が息子の新しい恋人だとして、

しかし息子はやがて死ぬのだとすれば

島村の頭にはまた徒労という言葉が浮かんできた。

そして、島村は駒子に純粋さをみて惹かれていく

というね、川端康成の「雪国」でした。

読んでいて「日本語は美しい」というのは

こういうことなのかなぁと、ぼんやり思いました。

ひとつひとつのエピソードにどんな意味があるか、でもなく

絵画のようにあるがままを読んでいた。

長いトンネル、汽車、坂の多そうな田舎の街、雪の街、スキイ、

そこに住む素朴な人々、温泉、湯けむり

そういうものに想像をふくらませた。

 

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