ずんの日記

毒にも薬にもなりませぬ

【読書感想】徴産制/田中兆子/新潮文庫

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田中兆子さんの「徴産制」を読みました。

「甘いお菓子は食べません」も以前に読んで、

あー、好きだな、この人の小説、と思ったので

新刊のこれにも手を出してみた。

 

コロナ後に書き進められたものだろうか、ありそうな話で引き込まれる。

スミダインフルエンザの流行で日本の若い女性がほぼ全滅してしまい

可逆的性転換手術が可能となり18~30歳男性に

子供を産む義務が課せられるようになるという近未来の話。

今現実におかれている状況ともずいぶんシンクロするので

パンデミックとかアウトブレイクという言葉が

映画やSF物語の中のものだけだと思っていただけ

結構リアルなパンデミック下に今あるんだなと、改めて実感したり。

しかし小説はそのことではなく、男性へ女性の役割をあてることで

不当な差別への「実感」を読者に(男女問わず)もたらすだろうという主旨だと思う。

男女逆転物語は数多くあるみたいだけど。

私が印象的だったのは、慰安婦問題や原発問題など

今もなお残る現実の負の遺産についても、これでもかと触れているところで。

仮想的なシチュエーションで遊んでいるわけではなくて

現実の問題も浮き彫りにして問題提起していますね、これは。

 

男性が女性になったときに見える現実は

女性のままでみる現実より、目をそむけたくなることばかりだ。

 

いずみん@短編小説「べしみ」も超絶よい